いつか見た光のなかの……

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ノアは砂浜を歩きながら、波の音を聞いていた。 裸足で歩くと砂の感触が懐かしさを呼び覚ます。 子供のころにはこうして毎日砂浜で遊んでいたはずなのに、いつの間に海から遠ざかっていたんだろう…? いや、違うな…。ノアが育ったのは山の中だ。 海から遠い山里で育ったのに、毎日遊んでいたなんて…。 酔うと記憶がおかしくなるらしい。 それほど飲んだつもりはなかったのに、今日のワインはやけに回った。 きっと満月のせいだ。 月には魔力が宿っていて、満月の夜には常ならざる事が起きると言う。 波立つ水面に目をやれば、月光を反射して暗い青と波の白がゆらゆら揺れていた。 気持ちよく酔った頭はぼんやりして、風に吹かれて空も飛べそうな気がする。 立ち止まって海に向かうと、目の前にまあるい月がぽっかり浮かんでいた。 波打ち際に立って満月を眺めながら、足の裏の砂がさらわれていく感覚を味わった。 すこしずつ砂が波にさらわれて、足元から海に引きこまれていくような錯覚を起こしそうになる。このまま海に沈んだら、どんな感じなんだろう? あの子はどんなふうに感じただろう? あの海はいつも温かかったから、こんなに冷たくはなかったはず…。 ……あの子ってだれだ? それに光あふれるコバルトブルーの海……?
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