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「何してるの?」
振り向いたら、少年が一人立っていた。
ひどく整った顔立ちの少年だった。
白い肌に赤いさくらんぼのような唇。
短い髪は月光を反射して濃紺に見える。
「何してるの?」
もう一度訊かれて、ノアは首を傾げた。
何をしに来たんだったっけ?
「……わからない」
「わからない?」
「何か……、何かを探しに来た気がするんだが…、何だったんだろう?」
何を探していたか思い出せないが、とても大事なものだったことは覚えている。
とても、とても大切だったもの。
「忘れちゃったの?」
「うん、そうみたいだ」
「そう。よかった、自殺じゃなくて」
「自殺?」
少年に言われて、確かにそうかもと思う。
夜の浜辺に一人で立っていたら、自殺志願と思われても無理はない。
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