43人が本棚に入れています
本棚に追加
夜明け前の海辺で、ノアは目を覚ました。
穏やかな波の音が聞こえる。
もうすぐ朝日が昇る時間。
どうしてこんなところにいるんだろう?
ゆっくり身を起こして周囲を見回した。
白い砂浜が美しい海岸だった。
二日酔いなのか微かに痛む頭を振って、昨日のことを思い出そうとするけれど、あまりうまくいかなかった。
きっと酔ってドライブした挙句、適当に走ってまた海まで来てしまったんだろう。
山育ちのノアは海なんてろくに見たこともないのに、酔うとなぜか海が恋しい気になって、車を飛ばして海岸に来てしまうのだ。
まるで何かを探しているみたいに。
見えない誰かに呼ばれるみたいに。
昨夜、誰かと会話した気がするけれど、思い出せない。
なんだろう、とても懐かしいようなやさしい気持ちが残っているのに。
立ち上って砂を払っていると、今日最初の日の光がノアに届いた。
明るい光のなかに誰かの面影を見た気がして、ノアはしばらくの間、朝日を浴びて海に向かって佇んでいた。
完
最初のコメントを投稿しよう!