フラダンサーの妖しい腰つき

出会い

彼女は温かく、そして背中の弱い女だった…

「ヨシくんはあまり飲まないんだね」

千里は8杯目のビールを注文して、嬉しそうに口に運んだ。

ここは郊外のとある居酒屋で、昼間から僕たちは飲んでいた。

しがない小説家の僕にとって、千里が次から次へとビールをお代わりする度、僕は財布の中身を心配した。

(やべーな。金足りるだろうか…)

僕みたいな売れない小説家は金が無い。
だけど今更割り勘にしようとは言えなかった。

誘われたのは僕だが、こういう場所で女に金を出させるのは男のプライドとして許さない。

「いや～、もう腹がいっぱいだよ」

僕は先程、ビールやチューハイを4,5杯飲んで食ったせいか、満腹だ。

しかし、こんな小柄な身体によく大量のアルコールが胃に入っていくものだ。

千里と知り合ったのは約10日程前だった。
僕は小説家という立場ながら、出会い系サイトに登録していた。
部屋に籠って小説を書くような日々に異性との出会いは皆無だ。

何がきっかけで出会い系サイトに登録したのは忘れた。
ただ、非現実的な毎日から逃れる為に登録したんだと思う。

それから約５年、そのサイトに居座り続けている。

過去に何度か女性と会う機会があった。
自分の職業を聞かれ、小説家と言うと、興味を持ったのか、食いつくように根掘り葉掘り聞いてくる。

だけど、僕の作品を読もうとはしないのがほとんどだった。

だが、千里は違った。

僕の作品をべた褒めし、僕も悪い気はしなかった。

それからメールで何度かやり取りしていくうちに、彼女からお誘いがきた。
僕も千里がフラダンスの講師をしているという事に興味を抱き、会いたいと思っていたからだ。

そして約束の日、少し蒸し暑い残暑がある秋の訪れの週末の午後に僕らは出会った…