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ホテル2
僕は勝手に自己完結するようなシミュレーションをしていた。
そして9杯目この後のビールを飲み終え、僕は千里に「そろそろ出ようか?」と伝えた。
千里はうん、と頷き、僕は会計を済ませた。
いや~、しかし飲んだ飲んだ。
金額を見たら、13000円を越えていた。
ビンボー小説家にとって、この金額は痛い。
だが、割り勘だなんて口が裂けても言えない。
僕は財布から一万円札と千円札を三枚取り出した。
残った金額はちょうど一万円だけだった。
(これじゃホテルなんかに行けるワケがない…)
僕はこの時点で諦めていた。
会計を済ませ、再度テーブルに着き、千里に出ようと言った。
だが、千里はすぐに動けず、半分意識が朦朧としていた様に見えた。
僕は店員に水を頼み、千里に飲ませた。
「はぁ~何かいい気持ち」
千里は笑みを浮かべながら、水を飲んだ。
そして席を立った。
その時、「痛っ」と千里が声を上げた。
「どうした?」
「扉に指を挟んだの、痛ーい。」
千里はドアを開けた際、右手の人差し指を挟んでいたみたいだ。
「どれどれ」
僕は千里の手を取って人差し指を見た。
温かい…千里の手のぬくもりが僕の指先に伝わり、少し興奮を覚えた。
千里は僕の腕に絡んできて、肘に豊かな胸の感触が伝わる。
しかも真っ直ぐに歩けない…
(よし、今しかない!)
意を決するように僕は千里に尋ねた。
「あの、これから取材させてくれないかな?」
心臓がバクバクしていた…
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