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「そうだなぁ…あ、俺はあの人が好みかも」
最初に嬉々として指をさしたのは曹操だ。その指の先、そこには年齢が自分らより上だろう、見ようによっては艶めかしい女性が朗らかな笑顔を浮かべて会話を楽しんでいた。しかし問題なのはそこではない。彼女の手には、小さな子供の手が握られていたのだ。
「いや、兄弟、あれはダメだよ」
「節操がないのか貴様には、恥知らずが」
「ちょ、ちょっと待ってくれよ、正直に答えた結果だろ!?俺はあのくらいの年齢の女性が好きだ、人妻や未亡人だとさらに燃えるね。優しく抱きしめてほしい」
大きく溜息をし、袁紹は代われという様に曹操の頭を押し込めて、自らの頭を窓枠から外へと出す。
「俺の目に適う女がこんなところにいるとは思えないが…強いて言うならアイツかな」
少しどこか誇らし気に袁紹が指した女性。歳は同じか、少し低いか。顔が特に美人というわけでもなければ、スラリとした体でもない。ただおしとやかで女性らしく、清潔感に溢れ、育ちの良さが伺える人だ。だが、特徴がないというわけではない。逆に、特に目が引かれる一点があった。
「なんというか…」
「うわ、胸大きい。兄貴こそ露骨にスケベじゃないですか」
「な、五月蠅いっ。お前にだけは言われたくないぞ、曹孟徳!」
袁紹はそれほど酒に強くはないが、恥ずかしくなったのだろう、器の酒を全て喉に流し込んだ。そして少しの間が空き、曹操は眉を顰める。
「おい、ちょっと待ってくれ兄貴。何かオカシイ感じがしねぇか?」
「…あぁ、それは思った。おい張孟卓、貴様だけ何も言わないのは不公平だ。まさか書物に欲情していると言うのではあるまいな?」
確かに張バクは本の虫ではあるが、そこまで言われると心外だったらしい。さらに、僅かながら酒に酔っていたという勢いもあったのだろう。
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