第二話

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「とはいえ、儂はこの戦いに敗れるだろう」 「え?まだ、小競り合い程度にしか兵を動かしてないのに、どうしたのですか?」 「この兵士達は儂の配下の者達ではなく、朝廷の兵。ろくに馬に乗れないやつが多く、さらに儂はこのあたりの地形を全く知らず、策にも疎い。敵は失うものは何もない、死ぬことさえ恐れない『死兵』。地理感、士気、これらが欠けて勝てる見込みは少ない。正直、いかに被害少なく負けるかを考えている」  百戦百勝の董卓将軍には似合わない弱気な発言だった。張バクはそれに微笑んで返す。 「大丈夫です。かの高祖である劉邦の最大の敵であった、天下無双の豪傑項羽。その項羽の再来とまで言われている董卓将軍ならば、必ずや勝利するでしょう」 「はっはっは!褒め達者だな。儂の配下に貴殿の様な人間がおればどれほど心強いか」 「吉報を心よりお待ちしております」  酒宴も終わり、張バクは深く礼をして幕舎を後にした。現実的にはとても成しえないだろうが、彼の言う世界が実現すれば、と心を躍らせながら帰路に就く。まさに董卓こそ、英雄だとも思った。  それが大きな間違いであることなど、露ほども考えなかった。
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