極めて真面目なあとがき

1/1
前へ
/24ページ
次へ

極めて真面目なあとがき

 私の一番得意な女性一人称の小説です。  途中、現在に照らせば差別用語と思われる単語が頻出しますが、ママにしておきました。  きれいな嘘を連ねるよりは、汚い真実を書いた方がマシだと思ったからです。  これができるのは商業作家ではない強みだと思います。もちろん批判は甘んじて受けるつもりです。  冒頭に坂口安吾の言葉を引用しましたが、彼は不思議な作家で、ミステリー小説にせよ、純文学にせよ、随筆にせよ、突っ込まれ上等な作品を書くのですが、突っ込み続けていくうちになぜか真実へとたどり着いている、そんな類いの作家なのです。というわけで冒頭の言葉も、百パーセント賛同しているわけではないということを付け加えておきます。むしろ、反語的な意味合いが強いです。蛇足を重ねるなら、彼には従軍経験がまったくありません。  私は、この作品で戦争を書いたつもりはありません。この先も、社会を書くつもりも、政治を書くつもりもありません。私は小説書きとして、あくまで個人を書いていきたい。祖父は一年前に亡くなりました。この作品はそれ以前に発表したものです。これは祖父の人生そのものに捧げた作品です。
/24ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1人が本棚に入れています
本棚に追加