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「おまえが散らかしとうのが悪かっちゃろうもん」
正論だ。でも、それだけにイライラする。
「これは誰や?」
いつのまにか、おじいちゃんが机の端にある写真立てに触れていた。
「触らないで!」
さっきよりもずっと大きな声が出た。洋子と真奈美と私、三人で旅行に行ったときの写真。笑顔とピースサインのちょうど真ん中。写真を覆っているガラスにおじいちゃんの指紋がべっとりとついてしまっている。みずみずしい現在進行形の青春の思い出を、老いという薄暗さで汚されてしまったような気がした。
唾液まじりの舌打ちが聞こえた。
「小さいころからおまえば育ててきたつはおれとばあさんばい。育て方ば間違ったっちゃろうか。こげん口答えをするようになるとは、情けなか。ほんに情けなか」
両親が共働きだったから、私も兄も弟もみんなおじいちゃんとおばあちゃんに育てられた。でも、もう大人と言っていい年ごろになってもそのことを言われ続けないといけないのか。そう思うと、やりきれなくて、でも言い返せなくて、私はただ黙っていた。
「おまえ、どうせひまやろうが。ちった、じいちゃんの話ば聞かんや」
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