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身構えたはずの心臓は、
準備が足りなかったらしい。
ドクドクと激しい鼓動が私を襲う。
「……え?」
『何を?』と、いう言葉を私は飲み込んだ。
私を見つめる健吾くんは、
目が合った瞬間は確かに真顔だった。
健吾くんと視線がぶつかった途端、
顔の中心から耳の端まで熱が広がる。
私の顔の温度変化を察したのか、健吾くんが笑顔をつくる。
「……冗談だよ。今日、こうやって会えただけで、もったいないくらいのご褒美だよ」
健吾くんは「もう一回乾杯な」と、私の握るグラスに自分のビールグラスを再び合わせた。
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