乾杯 #2

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カウンターの他にはゆったりとくつろげるソファ席が2つあつらえてあった。 大晦日の夜、 店内にはもう一組、中年の男女がいるだけで、 彼らはソファ席で寄り添っていた。 私たちはそちらに目をやりながら迷わずカウンター席に座った。 カウンターの上から吊るされたペンダントライトの頼りない灯りが、私たちの手元を控えめに照らしていた。 ここには先程の店と違ってはしゃぐ若者の姿もなく、 大人の静けさが漂っていた。 静けさが私の鼓動を弾ませ、騒ぎ立てる。 健吾くんはジントニック、 私はソルティードックを頼んで、 チーズとドライフルーツを添えた。 静かに合わせるグラスの音も、この空間では優しく響いた。
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