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あの頃
甘さよりも酸っぱさの方が勝っていたあの懐かしい味は
大人になって
渋みと、ほんの少しのスパイスと、優しい甘さを含んで
また
私たちの思い出の味になる。
思い出は
塗りつぶすのではなく
塗り替えるのでもなく
優しく重ねる。
「健吾くん……おいしいね」
「だな。俺、これ、好きかも」
温かいワインは身体を温め、顔を火照らす。
頬が色づくのはそのせいだ。
「うん。私も……好き」
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