乾杯 #2

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あの頃 甘さよりも酸っぱさの方が勝っていたあの懐かしい味は 大人になって 渋みと、ほんの少しのスパイスと、優しい甘さを含んで また 私たちの思い出の味になる。 思い出は 塗りつぶすのではなく 塗り替えるのでもなく 優しく重ねる。 「健吾くん……おいしいね」 「だな。俺、これ、好きかも」 温かいワインは身体を温め、顔を火照らす。 頬が色づくのはそのせいだ。 「うん。私も……好き」
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