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先に駅に着いたのは私の方だった。
健吾くんがどんな車か知らない私は、
ヘッドライトが光る度にそちらへ顔を向けていた。
私の前でスピードを緩める車に思わず一歩足が出たが、
車は私の前をゆっくりと通り過ぎ、
少し先にいた学生を乗せて去っていった。
緊張と落胆が交互に押し寄せる。
我慢が必要だとは思ったが、
履き慣れないスカートは思った以上に身体の体温を奪った。
膝に当たる風は冷や水のように冷たく、
時折膝をさすりながら寒さを紛らわすために小さく足踏みをした。
駅の時計台の針は8時5分前をさしていた。
一台の車のヘッドライトが私に当たり、
眩し気に顔をそむけるとその明りは小さく絞られた。
大きなカーブを描いて黒のRV車が私の前に停車した。
一瞬覗いた横顔に足がよろけそうになった。
運転席のドアが開いて、運転手が降りてきた。
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