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私は大切な思い出を扱うように、
ワインを少しずつ丁寧に味わった。
健吾くんのグラスも私のペースに合わせてゆっくりと減っていた。
しばらくすると、バーテンダーが遠慮がちに声を掛けてきた。
「冬のホットワインは体を温めて、風邪予防にもなるんですよ。体も……心も温まります」
私はバーテンダーに無言で笑い返していた。
もう……ちゃんと温まってる。
カラダも心も。
グラスの中身が半分ほどになってくると、
私はこの後のことが気になり始めた。
この時間が途切れてしまうことが惜しくて惜しくてたまらなかった。
『ウチに来ない?』
女の私から誘い文句ともとれる発言をするなんて、
健吾くんにどう思われるだろうか。
軽蔑されるだろうか。
軽い女だと思われるだろうか。
でも……
処女でも童貞でもない私たちが
そんなに気を使うこともないんじゃないかって、
この時はアルコールの影響か、
少し大胆な考えが浮かんでいた。
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