乾杯 #2

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しかし、私のそんな考えは私ひとりの先走った考えだとも思えなかった。 触れる度に離れていた私たちの肘は、 ホットワインを飲み始めてからはずっとくっついたままだった。 『リン』 私を呼ぶ健吾くんの声がどんどん近くなる。 もう少しで、息がかかるんじゃないかと思うくらい。 「最後に……家で乾杯しよ」 私の言葉に健吾くんは「いいの?」なんて無粋なことは言わなかった。 「ホットワインの次かぁ。何で乾杯する?」 健吾くんは私を見ずに空になりかけたグラスを軽く振った。 「……ほうじ茶」 予想もしていなかった私の言葉に「なんだよ、それ」と健吾くんは私を見た。 「酔い冷まし……」 彼の責めるような視線にたじろぎながら返事をすると、 彼は再び目を逸らした。 「まだ……冷めたくねえよ」 健吾くんの言葉はいちいち私の心を揺さぶってくる。 私はどんな顔をすればいいんだろう。 笑って返したいのに、 上手く笑えない。 ……私だって…… 酔いが冷めたら ちょっと怖いよ……。
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