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しかし、私のそんな考えは私ひとりの先走った考えだとも思えなかった。
触れる度に離れていた私たちの肘は、
ホットワインを飲み始めてからはずっとくっついたままだった。
『リン』
私を呼ぶ健吾くんの声がどんどん近くなる。
もう少しで、息がかかるんじゃないかと思うくらい。
「最後に……家で乾杯しよ」
私の言葉に健吾くんは「いいの?」なんて無粋なことは言わなかった。
「ホットワインの次かぁ。何で乾杯する?」
健吾くんは私を見ずに空になりかけたグラスを軽く振った。
「……ほうじ茶」
予想もしていなかった私の言葉に「なんだよ、それ」と健吾くんは私を見た。
「酔い冷まし……」
彼の責めるような視線にたじろぎながら返事をすると、
彼は再び目を逸らした。
「まだ……冷めたくねえよ」
健吾くんの言葉はいちいち私の心を揺さぶってくる。
私はどんな顔をすればいいんだろう。
笑って返したいのに、
上手く笑えない。
……私だって……
酔いが冷めたら
ちょっと怖いよ……。
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