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店から出ると、冷たい風が火照った頬を撫でつけた。
健吾くんがさりげなく風上に移動する。
体育館の脇で私を見つけた時と同じように。
歩き始めた健吾くんが私を隣から見下ろしながら言う。
「そのコート。かわいいな」
コートを褒められて、ガッツポーズをしたいのをこらえ、両手をギュッと握りしめた。
「あの頃は赤のダッフルコートだったよな。…『赤ずきんちゃん』。みんなでそう呼んでた。……俺はオオカミにはなりきれなかったなあ」
健吾くんは夜空を見上げて白い息を吐き出した。
キャメルのコートの内側では、
心臓が激しく跳ねて、足がもつれそうになる。
健吾くん……
今ならオオカミになれるの?
……なってくれるの?
ほんの少しだけ間を置いて揺れる健吾くんの手に自分の手を絡めれば、それは叶うような気がした。
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