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私たちは賭けをしておきながら、
歩道の横を走る車になんかまるで興味がないように、
ヘッドライトの明かりから目を背けていた。
だいたい何を賭けるかも決めていなかった。
これだから酔っ払いの話は当てにならない。
だけどそんなことは気にもせず、
私たちははしゃいだ足取りで駅に向かっていた。
火照ったカラダは寒さを寄せ付けず、
見上げる空に浮かぶ星たちは、
小さな瞬きで私たちの再会を祝福してくれている。
運命の神様が
私にも微笑んでくれた。
そう思ったのに。
神様は
微笑んだフリして
笑いをこらえていただけだった。
神様は、
私にはどうしても優しくないらしい。
笑いをこらえて
まさに、このタイミングを待っていたのだ。
星たちのささやきにも、二人の息遣いにも容赦なく、
深夜にスマホの着信音が鳴り響いた。
どこか場違いに思えるその音が
浮かれる二人の足取りを止めようとしていた。
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