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ゆっくり目を開いて私の瞳に映るのは
今にも泣きそうな笑い顔。
私の欲しい笑顔では、もちろんなかった。
「リン。行こう」
健吾くんはゆっくりと歩きだした。
自分からは何も言葉が思いつかなくて、
私は健吾くんの言葉を待った。
半歩前を歩く健吾くんは両手をポケットに入れ、
少しだけ背中を丸めていた。
それを見ると音もなく心が沈む。
「……純也と会ったんだ?」
その言葉は沈んだ心をチクリと刺して、
その刺激で私の胸の奥がもがき出す。
「……うん。昨日、哲くんたち、私の学年のサッカー部で集まったの。……哲くんがメンバーを集めてくれて。私は行くまで誰が来てくれるのか知らなくて。そしたら……純也さんが来てた。橋本さんもいたよ。哲くん、私には何も教えてくれなくて……。私もまさか先輩が来てるとは思わなかったよ……」
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