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『純也さんが何て言おうと、関係ないでしょ』
……言えない。
二人は親友。
私には踏み込むことのできない域。
だけど、
私の気持ちは?
私の気持ちはどうなるの?
今にもこぼれ落ちそうな私の気持ち。
私が好きなのは……
「……健吾くん、私……」
「リン。送るよ」
健吾くんに遮られた私の言葉は……
行き場を失った。
駅までもう少しというところの上り坂で、
健吾くんはポケットから手を出し、私たちを照らすヘッドライトに向かって手を上げた。
タクシーが私たちの前で止まり、後部座席のドアを開けた。
「リン、おいで」
「……乗りたくない」
「風邪引くぞ」
「……引いたっていい」
駄々っ子みたいに健吾くんを困らせる。
健吾くんは小さな息を吐き出すと、
私の手を引いて私を無理やり後部座席に座らせた。
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