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健吾くんの表情から健吾くんが私と似たような感情を持っていそうなことはわかったつもりだ。
いくら私だって、少しは成長したのだ。
きっとこれは……
単なる自惚れなんかじゃない。
あとわずかでアパートが見える。
私は5年溜めた勇気とばかりに、
今にも破裂しそうな心臓を抱えて口を開いた。
「……健吾くん。今日……ほうじ茶は? なしなの?」
24歳にもなって、
5年分の勇気を使ってこんなことしか言えない自分に呆れるけれど
、私のいろいろが限界になろうとしていた。
しかし、返事を躊躇した健吾くんのせいで、
返事を聞く前にタクシーがアパートの前に停車してしまった。
私の気持ちとは無関係に、
タクシーのドアは機械的に開いた。
健吾くんは私に降りるように促し、
タクシーを一緒に降りた。
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