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健吾くんは運転手を振り返り、
「すぐに戻ります」と言った。
乾杯は……
なしに決定した。
健吾くんは階段の前まで私を送り、白い息を吐き出しながら寒さに肩をすぼめて言った。
「今日は遅くなったから。ほうじ茶はまた今度な」
『今度』なんてあるんだろうか。
彼が私に社交辞令を言ったのだとしたら、私は許せないと思った。
私は唇を噛んだまま頷くこともしなかった。
「リン。今日は会えてうれしかった。ありがとう」
その言葉に返さなければと思うのに、
脳も口も上手く連動して動かない。
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