乾杯 #2

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「……うん」 それだけを言うのが精いっぱいだった。 「早く上がれよ。おやすみ、リン。風邪引くなよ。じゃ」 健吾くんはタクシーに戻り、 ハザードランプを灯していたタクシーがゆっくりとすべり出す。 手を振ることも出来ずに立ち尽くす私の目からは 我慢し続けた涙が溢れ出した。 『会えてよかった』なんて言葉より 『もっと一緒にいたい』が欲しかった。 人は人を好きになると欲張りになるのだろうか。 私の想いは懐かしさからカタチを変え、 ゆっくりと新しい感情を成していくのに、 やっとほどけ始めた想いの糸は 私の心を締め付けるだけだった。
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