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伊勢エビを丸ごとモシャモシャやってるうちに、
「もごぉ~! お父様、あたくしが間違ってまひた! もういっそ金払うし、コネも権力もバンバン使うし! 見栄と私欲と打算と欺瞞にまみれた、偽りの関係だっていいから! とぉもぉだぁちぃがぁ、欲しいよぉ~!」
何かがキレて叫び出しちゃう、あたくし落合てりお。
「はっ! やっちまいましたわっ!」
我に返り、耳をそばだてます。
荒ぶってる間に誰かがトイレに入ってきてたら、人生詰みですもの。気配のない事を確認して、ひと安心……
ジャーッ
えっええええ!? 隣の個室から水を流す音!?
続いて、ごそごそと、絹擦れの音。ぱんつをはいたのですわね。それからドアを開けた誰かさんはつかつかと洗面台に向かい、手を洗いながら、おそらくはハンカチでもくわえた状態で……確かにボソッと呟いたのです。
「あ ほ く さ」
完璧に聞かれたよ! 殺せよおおおおーっっ!!
いや落ち着け、自分!
声だけで、身バレまではしてないはず!
ソイツが去ってから呼吸を整え、お弁当箱を風呂敷に包むと、優雅な所作で立ち上がってドアを開けました。
そしたらバッタリはち合わせ。
偽りの仲良し女子グループと。
「落合様よ! 今日も今日とて神々しいお姿! でも、お花つみ場で何をなさってたのかしら。ま、まさか!」
「ちょっとあなた、下品な想像は今すぐやめなさい! 私達ならともかく、女神である落合様が、しーしーだのブリブリだのなさるはずがないわ! きっと、アレよ、外宇宙の神とチャネリングとかなさっていたんだわ!」
なにいってだこいつ……って待って!
この状況はマズいわ!
便所飯とかバレたら詰む! 『トイレの個室でお食事なんてお下品ですわ~』とか言われてさ! でも片手にお弁当箱ブラ下げてるのに、どう言い逃れしますの? こんなの、ほぼ白状してるのと変わらないじゃんかぁ!
えーい! やけくそ行ったれですわー!
「おーほほほ! 皆さん、ご存じないの?
庶民の世界では、お手洗いでいただくのが常識よ! あたくし庶民大好きだから、リスペクトしてますの♪」
この我ながらアホくさい口からでまかせが、のちに、全校生徒の間で謎の便所飯ブームを引き起こすのです。リア充が連れだって個室を占拠したりして、あたくしのかけがえない憩いの空間は、永遠に失われたのでした。
オチ合☆
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