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ちかへ
本当は黙っているつもりだったけど、説明するね。
ちかには何の不満もないよ。でも、僕たちは、近すぎたんだ。
何をしていても、まず思い浮かぶのはちかのこと。自宅に一人でいても、耳をすませば君の声が聞こえるんだ。ちかの存在は、僕の中でとても大きくなっていた。
それが僕には不安だった。ちかを失ったら僕はどうなってしまうんだ、という不安もそうだし、なによりこのままでは僕はどこにも行けなくなる。ちかが応援してくれた漫画家になるという夢を、きっと曖昧に諦めてしまう、今に満足してしまっているから。
だから、さようなら。
何も言わずに消えるような勝手な男なら、ちかも嫌ってくれると思った。携帯もインターホンの電源も切って引きこもって拒絶して。でも、ちかは、諦めなかった。だから、こうして説明した。そのうえで、僕は、君に僕を嫌ってほしい。
夢をつかむまで待っててなんて、言えない。近くに居るからこそ甘えられない。それまでに君が幸せになれる相手を見つけられたら、その人と幸せになってほしい。
今までありがとう。
りんたろう
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