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彼女が飛び降りて以来、屋上は厳重に封鎖された。
僕は仕方なく漫然と授業を受け続け、月日だけを重ねていった。
ある日、廊下で彼女の姿を見た。
だが、彼女が退院してきても特に思うところは無く、あれから彼女と話すことも無かった。
桜の蕾がポツポツと咲き始めた頃、僕は再び屋上に足を運んでいた。
この日に来ることは決めていた。
答えを知るなら今日この瞬間しかないと、漠然と……しかし確信めいたものを感じていたからだ。
意を決して、僕はあの日の彼女のように「空」を見上げた。
屋上から見上げる景色は、澄み渡っていてどこまでも果てしなく広がっていた。
その光景は、幾度となく足を運んだこの場所で、僕が初めて見た景色だった。
不思議と目から溢れる涙を気にすることなく、時間を忘れてただ果てのない空を見上げ続けた。
職員室から拝借してきた鍵と、紙の入った筒を握りしめて、漸く僕は初めて見る景色に別れを告げた。
「……さようなら」
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