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ただ、起きたことは全て受け入れるしかない。
仲間が死に絶えて行く恐怖すら、受け入れる。
時が経つと、差すような太陽の光から身を守ってくれるはずの木々も枯れ、食べ物も減っていった。
森が枯渇し、浜が少しづつ二本の木に迫ってきた。
二本の木、だけになった。
いや、彼らと、そして砂浜だけだ。
名も無い生き物たち…はもういない。
ずっと見守ってきた可愛い小さな動物たちもいつしか消え、色とりどりの鳥たちの声も、永遠に蘇ることは無い。
二本の木は、足元に迫る海を、枯れた枝の下に見ていた。
やがて、背の高い方の木は幹が曲がり、背が低かった方の木よりももっと縮んでしまった。それを、低かった方の木の、枯れて折れそうな枝がかろうじて引っ掛けて支える。
二本の木は寄り添い、お互いを支え合い、何とか命ある限り生きようとただそこにいるかのように見える。
どのくらいの時間が経ったのかわからない。
幹が海水に浸かり、二本の木は、もう風を感じることも、海を感じることもできなくなっていた。
ある日、背が高かった方の木がザワザワと音を立てて、海の中へと沈んで行く。
低かった方の木は、鳥のさえずり以来の声を聞いた気がした。
「さよなら、さよなら、さよなら、さよなら…」
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