手紙

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仕事を終えて帰宅すると、郵便受けに一枚の紙が挟まっているのを見つけた。 二つ折りになった紙。 それが手紙のように郵便受けに挟められていたのだ。 何だろう? 俺は郵便受けから紙を引き抜く。 開いてみれば、内容は実にシンプルだった。 『ケンジヘ さよなら ナオコより』 綺麗な字で綴られた、別れのメッセージ。 手紙のようだと思っていた紙は、どうやら本当に手紙だったらしい。 「……ナオコ……」 俺は体を震わしながら呟いて、 そして、 「って、誰ッ??」 魂を震わせながら、夜空に向けて叫んだ。 ちなみに俺はタケル。 ケンジさんではありません。 一人暮らしで、彼女なし。 サヨナラされるようなアテは、いっさいありません。 ケンジヘッ。 サヨナラを言ってもらえるだけ、お前が羨ましいよッ。 でもって、オマエ誰? タケルよりッ。 どうやら、このナオコは俺とケンジの郵便受けを間違えたと見える。 俺はどうすればいい? 「このアパートに、ナオコという方からサヨナラされるような心当たりをお持ちのケンジさんはいらっしゃいませんかぁッ」と、そう叫んで、ケンジさん自ら名乗りを上げてもらいたいが、でも、ケンジさんが怖い人だったらどうしよう。
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