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「隠し事をしてもばれてしまうでしょうから、言うわ。お父さんをよびにいって、一緒にあなたが救った命を奪いにいくの。間に合わなくなる前に」
「どうしてそんなことするの!命を大切にしなさいって教えてくれたのは母上じゃないか!」
「うるさい!命を救うために、彼らの失われるはずだった命をいただくだけだ!お前はだまって家にいろ!絶対に外に出るんじゃない!」
突然乱暴な口づかいになったかと思うと、母親は、音もなく家をで、足音もたてずに走りさっていった。
しばらくは母親のいうとおり家にいた瞬だったが、高鳴る胸をおさえきれず、外へとかけだす。
すると、町中で役人たちが忙しくしている姿が見受けられた。それも、瞬が治療を行った家の付近にばかり人が集中している。
瞬は、胸に手をあて、高鳴る鼓動をおさえながら、国州邸に向かう。
そこには、手にこん棒やら斧やらをたずさえた、瞬のかつての患者たちがいて、屋敷を破壊していた。
「一体何が…」
そう言って言葉を失った瞬が呆然と立ち尽くしていると、患者の一人が瞬に刀をふりおろさんとした。瞬は恐怖にかたまり、逃げる機をいっしてしまったが、それを、咲がかんざしを患者の背に突き刺して注意をそらし、そのすきに真がだきあげて救いだした。
「一体どうなってるの?」
瞬が悲鳴に近い声でそう問うと、真がくちびるをかむようにしてから言った。
「お前がかかわった患者が急に一斉に暴れだして家族や家人をおそって、その家族が親父に問いただしにきたら、患者たちもこの家になだれこんできてな。あとは何が何だか…」
するとその時、爆音と共に国州邸から火の手があがった。
「うそ…父上は?父上はどこ?」
咲が錯乱して悲鳴をあげ、屋敷に入らんとしたので、真がそれをとめる。
「父上は、大丈夫だ。きっと逃げおおせているはずだ。それより、俺達も安全な場所に逃げるぞ」
火が消し止められたのは、それから二時ほどたったころだった。国州邸を全焼するにとどまった火災だったが、へたをすれば、町の多くを焼き払う大惨事になっていただろう。
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