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真の家は、城島の繁華街に程近い場所に建っている。母親は亡くなっているが、父・国州紫翠(くにすしすい)は医をしていて、腕がたつと評判であった。 そんな国州邸につくと、真は入口近くで書き物をしている娘に向かって言を発する。 「咲、親父はいるか?」 「ええ。奥にいるわ」 咲と呼ばれた娘は、小難しい顔をして真の問いにこたえる。かたわらにはそろばんがあり、どうも、収支の計算をしているようだった。 咲は、真の一つ下の妹で、父・紫翠を影でささえるべき妻のかわりをしている。そのせいか、歳より大人びていて、真よりも確実に悟っているようにみえる。 「こんにちは、咲さん」 瞬が咲に笑顔を向けてあいさつをする。 「こんにちは。瞬くん、また大きくなった?」 その言葉に、瞬は顔を歪めて泣きべそをかく。 「今それ言うな、咲。それで、親父に用があんだよ」 真が瞬をなだめながらあわてて言うと、咲は、一瞬けげんな顔をしたが、すぐ表情をやわらげて言った。 「よくわからないけれど、ごめんなさい。父は名医だから、きっと大丈夫よ。悩みが解消されるといいわね」 奥の部屋に入ると、紫翠はこちらに背を向けて何やら書物を読みふけっていたが、真たちに気づいて振り返ると言った。 「おお、真。何の用だ?瞬殿も」 「それがな、親父。瞬がよ、尋常じゃない成長ぶりでさ、早死にすんじゃないかって心配でさ。みてくんねえか?」 「これ、真。早死にとか、そんなことをそうやすやすと口にするものじゃない。瞬殿、心配なさらず。さあ、いらっしゃい。診てあげよう。」 そう言って紫翠は両腕を広げるようにした。 瞬はそんな紫翠のもとに怖ず怖ずと歩みよる。 紫翠は、瞬と真から話をききながら触診などをし、見分すると、表情をやわらげて言った。 「特にこれといって異常はないようだがな。まあ、あっという間に体が年寄りのようになる病はあるが、身長が伸びるのはまれだ。ただの成長期ではないか?真もあまり人をおどかすものではないぞ」 「すみません、父上」 そうかしこまって言って真が縮こまる。
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