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「あやまるなら、瞬どのにあやまりなさい」 紫翠がやさしく諭すように言うと、真は瞬の方に向き直って、ごめんな、と頭をさげた。それにくちぞえするように紫翠が言った。 「息子が申し訳なかったな。そうだ、饅頭をもらったんだが、食べるか、二人とも」 そう言って、紫翠は、にっかと笑う。 「はい!」 真と瞬は満面の笑みでこたえる。 饅頭を食べ終えると、真と瞬はまた遊びにでかけた。ちゃんばら、陣取り遊び、たまはじき…。どんな遊びも、真となら、瞬には極上の遊びのように感じるのだった。 日もかたむきかけたころ、真は瞬に、家にとまってけよ、と言った。 「それは、悪いよ…」 縮こまって瞬が言う。 「悪かねえよ。俺たち、だちだろ?それにお前、家に帰ってもだれもいねえんだろ?放任主義のくせに、泊まったのばれるとうるさい親なのか?」 「いや…そうじゃないけど…」 「じゃあ、きまりだな」 瞬は、あきらめて真のいいなりになることにした。真は、言い出したらきかないたちであるし、自分自身も、一人さびしく夜をすごすよりは、その方がいいことはわかっている。しかし、瞬は、迷惑をかけることを人一倍気にするたちで、ずっと言い出せなかったことを真に言い当てられて内心驚きもしたが、うれしくもあった。 瞬の両親は、何の仕事をしているのか分からないが、ほとんど家には帰ってこないので、一日中何をしていても、怒る人間はいない。瞬は、さびしくはあったが、両親は、都から落ちてきた人間であることは近所の人のうわさ話からわかっていたので、相当の苦労があることは知れており、自分までが悩みの種にならないよう、子供なりに気をつかっていた。それでも、時々、さびしさをぶつけてしまいたくなる時があり、そんな時は、真やその家族に頼ることにしていた。
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