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その翌日から、瞬は、普通なら死ぬところの人間や、完全な死人まで、その血で息をふきかえらせるという奇跡のわざをおこしていった。 患者の家族は、その治療費として多額の金を支払い、紫翠はそのうちの五分ほどを瞬に支払った。 「明日も頼みますぞ」 紫翠は小判のつまった袋を片手にいつも上機嫌で屋敷に帰るのだった。 いくばくかの金を手にした瞬は、それで、めずらしいものを買っては母親に贈った。しかし、毎月の小遣いでたりるほどの贈り物ではないと気づいた母親は、瞬にその出所をたずねた。 「瞬、だれかからお金をもらったりしているの?盗んだとかじゃないわよね?」 「うん、あのね、お医者さんのお手伝いして、働いた分をもらってるの」 「国州殿のこと?」 「うん」 瞬はそう元気に頷いて、母親に笑顔をむける。 「義を心得た方だとは評判で聞いてはいるけれど、あなたがもらっている額は相当のようだから、何か特別なことでもしているの?母さん、心配だわ」 「あのね、僕の血を傷口にたらしたり飲ませるとね、患者さんが息をふきかえすの。一人助けると、銀貨を十枚くらいもらえるの」 満面の笑みでそう答えた瞬とは対照的に、母親は、ひきつった顔をしてしばらく瞬を見つめたあと、瞬の両肩に手をおいて、真剣な面持ちを向けると言った。 「いい、瞬。もう、そんなことをしちゃだめよ。血の力をつかっちゃだめ」 「どうして?みんなよろこんでくれるのに」 「そんなことをしても、だれのためにもならないわ。いえ、それじゃわからないだろうから、はっきりいうわ。あなた、利用されているのよ。金づるにされているのよ」 そう言って母親はくちびるをかみ、瞬をいだく手に力をこめる。 「そんなことないよ。真と咲さんのお父さんだよ?」 瞬は、けげんな顔をしてそう言うと、口をとがらせて母親をにらんだ。 母親は、瞬の説得には時がかかるとふんだのか、外出の準備をしはじめた。 「まだ間に合うといいけれど…」 「何?何をしにいく気なの、母上」
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