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三田村恵は、ハンバーガーショップでバイトをする女子大生。誰にでも笑顔で接する女子である。
ある日、バイトを終えて帰宅し、食事を終えて風呂から上がったとき、異変に気がついた。ちらかしていた部屋が片付いていたのだ。恵は、恐怖に怯えていた。
「まさか、ストーカー?」
大学の講義の休憩時間に恵は昨日の出来事を考えていた。隣の親友の真美は心配して話しかける。
「恵、どうしたの?元気ないね」
「うん、実は昨日部屋に誰か侵入した形跡があるのよ」
「もしや、泥棒?」
「ううん、何も取られてない」
「田舎のお母さん」
「違うわ、ずっと家にいたって」
「気持ち悪いね、警察に届けた?」
「事件じゃないから様子見てって言われた」
それから数日後、今度は、テーブルに料理が置かれていた。ごはんにお味噌汁、肉じゃが、煮魚など美味しそうなメニューばかりだった。
恵は、ショックを受け、田舎の実家に帰った。母親は尋ねた。
「いきなり、どうしたの?大学は?」
「だって、不思議なことが起きたのよ、部屋が綺麗に片付いていて、食事も用意されていて恐いのよ」
「分かったわ、私がついて行ってあげるから戻りましょう」
恵は、渋々東京に戻った。母は料理をつまみ食いした。
「懐かしい味付けね、これはきっと…」
その日の夜、恵は、不安で眠れなかったが、母親は隣でグーグー寝ていた。
午前2時、ふと目覚めると、目の前に亡くなった祖母が立っていた。
「恵ちゃん、元気してた?貴女に大切な事をお伝えしにやってきました」
「おばあちゃん?」
「あなたは、もうすぐ運命の人に会います。そして結婚します。貴子は、貴女に家事教えてこなかったから何も出来ないけど、今から少しずつ練習して下さい。レシピ本書いておきましたから、これをみて、頑張ってね」
祖母は、分厚いノートを恵の前に置いた。
「おばあちゃん、ありがとう」
その3ヶ月後にバイト先で運命の人に出会い、半年後に結婚した。苦手だった家事もてきぱきこなせるくらい上達していた。仏壇の遺影に手を合わせる。
「おばあちゃん、ありがとう!あのね、ひ孫が出来たのよ」
祖母の写真が微笑んでいるように見えた。
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