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特急電車の指定席に座るのは随分久しい。
終点までは二時間以上もある。生憎の一人旅で退屈だ。窓の景色でも眺めながら居眠りでもしたいところだが、残念ながら目が冴えているようだ。一向に眠気はやって来ない。
窓に映る透き通るような晴天の空。
それとは対照的に、私の気分は暗く、重い。
姉に逢うのは、四年ぶりになる。
姉と私は歳が六つ離れている。世の平均的な兄弟姉妹の歳の差と比べると、圧倒的に離れている方だろう。周りの歳の近い兄弟や姉妹が羨ましくなかったと言えば嘘になる。
が、私は歳の差などに興味はなかった。
“明るく、面倒見が良く、真面目で気の利く素敵なお姉ちゃん”。大人達の姉に対する評価は大体そんなものだった。勿論、それが間違っていたという訳ではない。姉は成績も良かったし、運動も出来た。手先だって器用な方で絵のコンクールで賞を取った事も何度かあった。その上、嫌みったらしさなど欠片もなく、人当たりのいい明るい性格だった。
何をやっても人並み以上の成績を残せる。それが私の姉だった。
私は、姉が大好きだった。
私が物心ついた時、姉はまだ小学生だった。にも関わらず、共働きの両親に代わって幼い私の面倒をよく見てくれた。私が退屈を訴えると公園へ連れて行ってくれた。雨の日には絵本を読んで私を楽しませてくれた。時には字の読み方や書き方も教えてくれた。
いつでも遊んでくれて、物知りで何でも教えてくれて、明るくて、優しいお姉ちゃん。幼かった私が彼女に懐くのは必然だった。いつしか私の目標は”お姉ちゃんみたいになる”事に定まり、その為に毎日毎日、それこそ金魚の糞のように姉に着いて回った。
あの頃の私達は、ただの姉妹だった。
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