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姉が都会の街に憧れ始めたのは彼女が中学三年生の頃だった。切欠は自身がキャプテンを務めるバレー部が全国大会で東京に遠征した事。因みに、バレー部が全国大会で遠征できる程に駒を進められたのはその時が初めてだったという。 大会から帰った姉の土産話は、試合の事ではなく、東京の街並みが如何に凄かったかというものだった。とにかく将来はあの街に住みたいと目を輝かせていたのを鮮明に覚えている。 その為に、と姉はより一層、受験勉強に取り組んだ。少しでもレベルの高い高校に通う為だと。元々賢かった頭を更に賢くするべく、直ぐに行動に移したのだ。 この頃の姉は”向上心”という概念を具現化したような人だった。高い目標に向かって惜しみ無い努力を注げる確かな強さに満ち溢れていた。 私はそんな姉が嫌いだった。 理由は姉への劣等感。よくあるものだ。 私は勉強が苦手だった。運動も、図工も、人付き合いも。姉の得意なものは全て人並み以下だった。 同じ親から生まれた筈なのに、どうしてこうも違うのだろう。当時の私がそう考えるのは至極当然の事だった。いつしか姉に八つ当たりをするようになり、姉の話を聞かなくなり、そして姉を否定するようになった。 こんな私を、姉が嫌ってくれたのならまだ良かったのかもしれない。だが、彼女の私に対する態度は昔と変わらないままだった。     
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