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3
四年前、姉は家を出た。
なんでも、東京にいる彼氏と結婚するのだという。
勿論、両親は反対した。何せ彼らは姉に恋人がいる事自体、知らなかったのだ。そして、その名前も分からない相手と急に結婚するだなんて言われれば、誰だって反対するだろう。私だって反対していた。直接何か言えた訳ではないが、心の中では姉が心配だった。
───だが、その話し合いが終わってから五日後。姉は私物と共に姿を消した。
あんなに優秀で可愛がられていた姉が、最後には家出したのだ。手紙すら残さずに、忽然と。
両親も私も、最初の内はすぐに帰って来るだろうと思っていた。どうせ友達の家にでも逃げているのだろうと。彼氏との結婚話すら嘘ではないか、なんて考えていた。
しかし、待てども待てども姉からの音沙汰はなく。焦って友達の家を訪ね歩いても姉の行方は掴めず。警察に失踪届けを出す事も考えたが、どうせ家出扱いされるだけだという結論に至り、警察を頼る事はなく、自分達で探し続けた。
その結果、姉が見つかる事はなかった。
姉が19歳、私は12歳の時の事だった。
姉を失って、私は初めてこれまでの行いを後悔した。
幼い頃からずっと無償の愛を傾けてくれたたった一人のお姉ちゃん。そんな優しい人に暴言を浴びせた事。謝るチャンスは何度もあったのに、謝るどころか悪びれもしなかった事。そして、姉と向き合うのを止めた事。挙げればキリがない。
今更後悔したところで姉が帰って来る訳ではない。そんな事は百も承知だった。
でも、私はまたいつか姉に逢えると信じていたから。その時ちゃんと謝る事が出来る自分でありたい。そう誓ったのだ。
その為にこれまで様々な努力をしてきた。散々私を苦しめた劣等感を捨て去り、他人と比べたりせずに、先ずは自分自身と向き合った。何か一つでも誇れるものを身に付けようとした。周囲への気配りや感謝の気持ちも忘れないようにした。
姉が失踪してから、私は自分を高める努力を怠らなかった。
全ては姉と再会する日の為に。姉の前で恥じない自分である為に。少しでも私が大好きだった姉に近付く為に。
そればかり考えていた。
そして、待ち望んだその日は訪れた。
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