骨と肉のラプソディ

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 学校で習うコトが人類の光の側面だとするなら、あたしたちは影の住民といえるかしら。魔法でも妖術でも、呼び方は何でもいいけれど、不可思議の力を拠り所とし、生きるモノたち。  あたしはとある錬金術師が烏と人間を混ぜ合わせて造った翼ある人型、らしい。曖昧な言い方しか出来ないのは、そこのところをハッキリ問い詰める前に錬金術師が死んでしまったから。素材になった人間とやらの記憶も持ってないし、真相は永遠に闇の中ね。  でもあたしは別に構わない。過去が何だろうと、今を生きることしか出来ないんだから、そうでしょ?  そんなわけで、あたしは今、人間のフリをしながらニューヨークの片隅で日々を送っている。背中の翼を隠すのはけっこう難儀だけど、工夫すれば方法は色々とあるから困りはしないの。それでも、こうして羽根を晒しても大丈夫な夜があるって、とても嬉しいものよ。  あたしは陽気な鼻歌とともにアパートの階段を昇り、五階の自宅に戻る。  この部屋には同居人がいる。彼の名はトビー。あたしと同じ錬金術師に造られたヒトの形をした何か。繊細で真面目な彼はライターとして生計を立てている。人と触れ合うのが苦手だから、自宅で働ける生き方を選んだのね。見た目で彼が普通の人間でないことは、まず分からないのだけど。  そんな引きこもりがちな彼も、今晩だけは外出する気分になってくれる。町の浮かれた気分は内省的なトビーを外へ誘い、あたしたちは久しぶりに解放された心地をたっぷり味わいながらそぞろ歩き出来る。楽しみだわ――というお祭り気分は帰宅して三十秒でぶち壊しになった。
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