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「で、これからどうすればいいの?」
前の命に未練がない訳ではないが、あの状態で無傷で生還できるほど楽観もしていない。
黒き塊が猛スピードで…。
目を伏せ頭痛に襲われた頭を振り、再び女へと視線を戻す。
「本来なら一から説明するところなんだけど、事情はわかっているみたいだから途中からでいいわよね?」
「いいよ。それで、次は鉱物?それとも植物から始めればいいの?」
そう言った時、一瞬固まったように口を開いたがすぐに女は可笑しそうに口の端をつり上げた。
「そう、貴女の世界ではそういう宗教でもあるのね…。その発想はなかったわ」
今の女の笑い方は可笑しいではなく嬉しいだったのかもしれない。表情が読み取りずらいので何とも言えないが。
「まぁ、次は人間の予定だったわ。だけど、気が変わりました。……そうね。まずはスライムからやってみましょうか」
その言葉を聞いたとき、思考が止まった。
「す、すらいむ!?」
「えぇ、大丈夫よ。思考速度を下げて、ひたすら運を悪くして一瞬で終わらせればまた此処に戻ってこれるでしょうから。そしてその後にー…」
ライトノベルで呼んだことのある名前の生物や聞いたことのない名前をぶつぶつと呟く女は不気味で、呪文を唱えているように聞こえる。
「あぁ…素晴らしい。やはり貴女を選んで正解だったわ! それじゃ、時間も惜しいし転生の旅に行ってきなさい」
「ちょっと、少しは説明をー…」
問答無用だった。意識を刈り取られる様にの前が真っ暗になっていく。
固い地面に落ちた…ような気がする。
何せ感覚がないからだ。
何処だここ…。
と呟こうとしたが声がでない。というか体が動かない。
這いずるようにどうにか体を動かすが、思うように体が動かない。
一体なにがー…。
その瞬間体が軽くなり、私の体が光に包まれたように温かく、眩しく瞳を照らした。
「おかえりなさい。早かったわね」
「え、何があったの?」
「何って、スライムに転生して死んで戻ってきただけよ?」
何を可笑しなことを言っているのと咎めにも似た口調で言われた。
「一体何がしたいの?」
私からしたら変な生物に転生させられ、一瞬で命を終わらせられたようなものだ。
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