11人が本棚に入れています
本棚に追加
大丈夫……明日からは元の自分に戻ろう。
平穏を保って、今まで通りに接したらいい。
そう考えていた。
夕方、大学の研究室を片付けていると思わぬ来訪者があった。
「よっ!青木、お疲れ~!」
「富田。仕事帰りか?」
富田はこの春卒業して就職していた。
そのまま近くの居酒屋に行くことに。
「で、澤ちゃんとはどうなった?」
聞かれるだろうとは思っていたが……乾杯後の第一声がそれだった。
「やっぱり付き合ったか~!いや、安心したよ!あれ以来、お前女に懲りてたからなぁ」
富田は前の彼女のこともその時の騒動も全て知っているが…。
「……で、その割になんか元気ねぇじゃん?また何か考え込んでんのか?」
1回の時から付き合っているコイツは、さすがに俺の性格もよく分かっている。
「いや……彼女に、付き合ってることを内緒にしてほしいって頼んでたんだけどさ……」
「はぁ?まだあの時のこと気にしてんのか?」
「いや、結局バレた。彼女じゃなくて別のとこから……でも、予想以上に動揺した…」
「…そりゃ、お前があの時かなり精神的に参ってたのは俺も知ってる。でももう噂だってみんな忘れてるよ。気にしてんのはお前だけだって!」
富田の言うことも、もちろん分かる…。
「それにな、いつまでも壁作って自分のことばっか守ってたら、澤ちゃんにまで捨てられるぞ?」
今までにフラれた彼女にも同じようなことを言われていたので、耳が痛い。
でも……相手が嫌になって離れるなら仕方ない。
そう思っていた……今までは……。
「今回は、違うんだろ?見てたら分かるって」
……その言葉を、ゆっくりと考えた。
最初のコメントを投稿しよう!