第五章

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ホテル以降、野田さんは仕事場に来なくなった。 その代わり…携帯にメールが入るようになった。 『来週の水曜日、何もないか?』 またホテル?と思いながらも… あたしは野田さんと寝たかった。 ここ何年も生きた心地がしなかった。 だけど…そんなあたしが、野田さんの腕の中では生きた女だった。 『バンドの練習とかないの?』 『平日の昼間にやるわけないじゃん。みんな働いてるし』 『ふーん…カラオケ行って歌聞かせてよ』 『カラオケ?嫌い』 『ケチ』 そして、水曜日。 この一週間、あたしは野田さんとのセックスを思い出して…何度も目を閉じた。 何だろう…この気持ち。 「あれ。満室だ。」 先週訪れたホテル。 残念な事に、満室。 野田さんは髪の毛をかきあげながら。 「じゃ、一時間ぐらいカラオケ行くか。」 突然、歩き始めた。 「えっ?嫌いじゃなかったの?」 「嫌いだけど、仕方ねーじゃん。一時間もしたら昼休みに入ってる奴らが出るだろうし。」 「…そこまでしてホテル行きたい?」 あたしは行きたい。 でも、あえて野田さんにも聞いてみる。 「2人で邪魔もなく長時間のんびりしてられる場所って、決まってんじゃん。おまけにクーポン使えて安いし。部屋もきれいだしなー。」 …あまりにも本音を言われて、少しガッカリした。 そこまでして、行きたい。 おまえを抱きたい。 …あたし、そんな言葉を期待していたのだろうか。
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