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ホテル以降、野田さんは仕事場に来なくなった。
その代わり…携帯にメールが入るようになった。
『来週の水曜日、何もないか?』
またホテル?と思いながらも…
あたしは野田さんと寝たかった。
ここ何年も生きた心地がしなかった。
だけど…そんなあたしが、野田さんの腕の中では生きた女だった。
『バンドの練習とかないの?』
『平日の昼間にやるわけないじゃん。みんな働いてるし』
『ふーん…カラオケ行って歌聞かせてよ』
『カラオケ?嫌い』
『ケチ』
そして、水曜日。
この一週間、あたしは野田さんとのセックスを思い出して…何度も目を閉じた。
何だろう…この気持ち。
「あれ。満室だ。」
先週訪れたホテル。
残念な事に、満室。
野田さんは髪の毛をかきあげながら。
「じゃ、一時間ぐらいカラオケ行くか。」
突然、歩き始めた。
「えっ?嫌いじゃなかったの?」
「嫌いだけど、仕方ねーじゃん。一時間もしたら昼休みに入ってる奴らが出るだろうし。」
「…そこまでしてホテル行きたい?」
あたしは行きたい。
でも、あえて野田さんにも聞いてみる。
「2人で邪魔もなく長時間のんびりしてられる場所って、決まってんじゃん。おまけにクーポン使えて安いし。部屋もきれいだしなー。」
…あまりにも本音を言われて、少しガッカリした。
そこまでして、行きたい。
おまえを抱きたい。
…あたし、そんな言葉を期待していたのだろうか。
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