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「久しぶり~。」
「今日、どこ泊まるの?」
「仕事、有休取ってきちゃった。」
「明日、何時の新幹線?」
野田さんのバンドの前になると、そんな声が色んな所から聞こえてきた。
県外から、仕事を休んでまで見に来てる?
少しだけ、ドキドキしてしまった。
あたしは…
あたしは、とんでもない人と寝てる?
照明が暗くなって、ステージの幕があいた。
途端に湧き上がる歓声。
そして、あたしの知らない野田さんが…ステージの中央に走り出てきた。
「すごかったでしょ。」
「…そうだね。」
ライヴハウスの向い側のビルの二階にあるカフェ。
あたしと今日子ちゃんは、ライヴの後でお茶をしている。
ライヴハウスの入り口を見下ろしていると、『出待ち』と呼ばれる女の子達が群れを成していた。
「コーシローから告白されたんだ。」
「え?」
「彼女になってくれって。今日のライヴの後で、返事聞かせてくれって。」
「いいの?こんなとこにいて…返事は?」
「…まだ悩んでる…」
告白。
羨ましい気がした。
好きと言われる事が。
愛しいと思われる事が。
「今日のライヴ見たって、コーシロー人気者だし…どうしてあたし?って思ったりしちゃうし…」
あたしも似たような事を思っていた。
あたしが、あとくされのない既婚者だと野田さんの勘違いがあるだけで…
もしそれがなかったら?
あたしと野田さんは、こんな関係にはなってない。
どうしてあたしなの?
その答えは、既婚者だから。
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