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「ねえ、園。」
「ん?」
「…どうして、あたしと結婚…?」
バスが来た。
園は、バスのドアが開いた瞬間、あたしの手を握って言った。
「ずっと、探してた。」
「……」
「ずっと朝子が欲しかった。」
園の目を見つめる。
「…またね。」
それだけ言うのが精一杯だった。
手を離して、バスに乗る。
手を振る園を見つめながら、考える。
出会った頃は、園に夢中になった。
恋に恋してる感じだったけど、それは雅樹との乾いた関係を潤せるほどの力を持ってた。
だけど、一線を越えてしまう出来事は…園と双子の妹、志乃さんの企みも手伝ったような気がして…2人が怖かった。
それでも結局、あたしは雅樹を弟の寛武に取られて、自ら園を欲しいと思った。
あたしは、自分の感情をよく分かってない気がする。
雅樹を愛してた。
園に恋をした。
亮太の事も、愛しいと感じた時期があった。
野田さん…野田さんほど手に入れたいと思えた人はいない。
ここ数年の間に、あたしを抱いた男達。
あたしは冷たい心のままで、みんなに抱かれた。
あの時、もっと素直になっていたら?
亮太は、ナオではなくあたしを選んだ?
野田さんは、あたしとの関係を続けて、いずれはあたしのものになってくれた?
今となっては、全て後悔だ。
後悔しないためにも、今のあたしがするべき事は何?
バスがマンションに近付く。
橋の手前で、自転車に乗った野田さんが見えた。
…土手、走るのやめたんだ。
胸が痛くなった。
昨日の今日だけど 、野田さんはあたしの事を忘れてないだろうか。
あんなに体を重ねて、唇の形まで思い出せるほどキスをした。
目を閉じると苦しくなる。
所詮不倫。
今更だけど、犯罪だと思えばあきらめられるかもしれない。
あたしのせいで誰かが泣く事を、何とも思わなかった。
そんな気持ちは、持ち備えていなかった。
だけど…これからは持とう。
あたしは、まだ生まれ変われる。
きっと。
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