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「どうしてあたしを見つけたの?あのままベランダで干からびて死ぬ予定だったのに。」
「朝子、ちょっと待て。」
「こんな思いするなら」
「待てって。」
野田さんはあたしの肩に手をかけて。
「あのさ、俺はちょっとしたケンカだと思ってんだけど。」
なぜか少しだけ笑顔で、あたしの顔を覗き込んで言った。
「…え?」
「分かり合えない部分が出てきた。じゃあ、これからそこをどうしていくか、ちょっと頭冷やして考えなきゃなとは思ったけどさ。」
「……」
「まさか、携帯解約するとは思わなかったな。」
「だって…もう終わったんだと思って…」
あたしの言葉に、野 田さんはふっと優しい顔になって。
「こんなケンカで終わるわけねーじゃん。」
あたしを抱きしめた。
「…だって…」
「悪かったな…おまえ、ずっと我慢してたんだ?」
「……」
「今度からは、どんどん言えよ。」
「…引かない?」
「引かねーよ。譲れない部分は俺も言うけどさ。でも、どうしても朝子が不倫に耐えられないっつーなら…その時は俺から身を引く。」
嬉しくなったり、悲しくなったり。
野田さんは、あたしを喜ばせておいて…結局最後に突き落とす。
何だ…
奥さんとは別れる気なんて、やっぱりないんだ…
現実を突きつけられて、あたしの嫌な女の部分に火が付いた。
「本当に、身を引けるの?」
野田さんの胸にすがって言う。
「…努力はする。」
「あたし…プロポーズされてる。」
「プロポーズ?」
野田さんが驚いてあたしの顔を見る。
園を引き合いに出してしまった。
だけど、それが何なの。
あたしはまた戻ってしまった。
純粋な気持ちなんて、結局負けてしまうんだ。
欲に勝てる物なんて、何もない。
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