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仕事が終わって帰宅すると、急いでシャワーを浴びて支度をした。
野田さんから買ったチケットの裏に書いてある地図を見ながら、ライヴハウスに向かった。
帰り間際に、園が『俺も行こうかな』って言ってたけど…
本当に来るのかしら…
思いのほか、お客さんが多くてビックリする。
椅子はないから立ちっぱなし。
前の方は、元気な人達で埋め尽くされそうだ。
あたしはいつも通り、この辺にいよう。
入り口に近い位置で、開演を待つ。
照明が消えて、客席のボルテージが一気に上がる。
ドラムの音と共に、幕が開いた。
CDを聴いていたから…っていうのもあったけど。
今まで見た数少ないライヴの中で、一番カッコいい野田さんだった。
座って歌う洋楽のコピーじゃない。
仲間と楽しむお遊びのバンドでもない。
誰かのヘルプでもない。
野田さんだった。
夕べ、あたしの中で何度も果てた男。
歌う野田さんはセクシーだ。
見ているだけで、早く抱かれたくなった。
「も~、最高だったね~。」
相変わらず、野田さんのファンは県外からも駆けつけているようだ。
この後、どこのホテルに戻るとか、新幹線が何時とか、そんな会話が飛び交っている。
あたしはその人達の間を抜けながら、ライヴハウスの外に出た。
「あ、すいませ…」
外に出てすぐ、人にぶつかった。
…見たことのある顔だった。
「いいえ、こちらこそ。よく見てなかったので。」
…野田さんの、奥さんだ。
つい固まってしまってると。
「朝子さんて、あなた?」
低い声で問いかけられた。
「…はい。」
「野田の妻です。主人がいつもお世話になってるようで。」
「……」
奥さんの目は、あたしをしっかり捉えて離さない。
あたしもまた…奥さんの目をじっと見つめた。
何やってんの。野田さん。
バレてるんじゃない。
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