第十章

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「朝子。」 ふいに、肩を抱き寄せられる。 「…園…?」 「誰だよ。紹介してくれよ。」 「こちらは?」 「はじめまして。婚約者の窪塚園です。」 「…婚約者?」 奥さんの眉間にしわ。 「何か?」 園の堂々とした態度に、奥さんは少しだけ考えて。 「どうか、お幸せに。」 いびつな笑顔を残して歩いて行った。 「どうか、って。挑戦的な言い方だな。」 園が鼻で笑いながら言った。 「…ありがと。」 「いや。」 「どうして分かったの?」 「何。」 「あの人が、野田さんの奥さんだって。」 「おまえが知らな過ぎなんだよ。二人とも雑誌にもよく出てる有名人さ。ま、二人が夫婦なんて知られてないだろうけど。」 「…そうなんだ。あたしって本当にダメね…」 「大丈夫。俺は俺のやり方で、お前を守るから。」 園はそう言って、あたしの肩にかけた手に力を入れた。
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