第十章

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重い足取りで、久しぶりの街を歩いた。 野田さんとよく行っていたうどん屋、まだあるかな。 「朝子。」 「え…?」 声をかけられて振り向くと、車に乗った野田さん。 「乗れ。」 急かすようにそう言われて、あたしは慌てて助手席に乗る。 「……」 お互い無言のまま、車はラブホテルに。 最初に口を開いたのは野田さんだった。 部屋に入ってすぐ、あたしを強く抱きしめて。 「…会いたかった。」 大好きな声で、そう言ってくれた。 「あたしも…」 お互い、求める事が止まらなかった。 「朝子、愛してる。」 野田さんが初めてあたしに『愛してる』と言った。 泣きたくなった。 こんなに愛されて嬉しいと感じながら。 「おまえは?」 「…何?」 「俺を愛してるか?」 それには答えず、唇を重ねた。 何度も重ねて来たのに、初めての気持ちになれた。 初めて愛し合っている気持ちになった。 奥さんと別れるとか別れないとか、そんなのがどうでもよくなってしまった。 二ヶ月会わない間に、あたしはどこまでも甘くなってしまったようだ。 「会いたかった。」 野田さんがあたしを抱きしめて言う。 「…そればっかり。」 「本当だから仕方ねーじゃん。」 「あたしも会いたかった…」 「らしくねーな。お互い。」 顔を見合わせて、笑う。 「…どうして奥さんにバレたか考えた?」 核心に触れてみる。 「考えたけど、わからなかった。だから俺から聞いた。誰から朝子の事聞いたのかって。」 ドキドキしてしまった。 野田さんは、あたしが思っているより…
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