第十一章

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初めての出産だが、あたしは落ち着いていた。 もうお腹はかなり大きいが、まだ仕事をしている。 色んなことを教えてくれているような気がした。 お腹にいるこの子が。 「沢田さん、今日これだけ注文があるんだけど。」 注文票をもらう。 「わかりました。結構数ありますね。近くだし、バイトの青木君と行きます。」 スタンド花が6つにアレンジが5つ、花束が7つ。 何のお店だっけ。 注文票の住所を見る。 ライヴハウス。 この近くにできたのね。 今日はこけら落としなのかしら。 金額と希望に応じたアレンジと花束を作った。 スタンドを用意して、青木君と車で運ぶ。 「青木君、ライヴハウスとか行った事ある?」 バンの後ろから台車を降ろしてる青木君に問いかける。 「しょっちゅうですよ。今夜も行きますよ。バイト終わったら即行。」 「ここに?」 注文票をヒラヒラさせながら言うと。 「そうです。今行ったらリハとか見れるかな~。」 青木君は嬉しそうな顔で答えた。 「有名なバンドが出るの?」 「地元じゃまあまあ名前が知れてるバンドっすよ。後は東京からゲストバンドが来たり。」 「へぇ~。そうなんだ。」 注文票には、ライヴハウスの名前以外に、バンド宛ての花束とアレンジもあった。 バンドの名前は『Final Destination』 「これが地元のバンド?」 青木君に注文票の名前を見せる。 「これはゲストバンドですよ。」 「そう。人気あるのね。こんなに花束が。」 良かった。 野田さんのバンドとは名前が違う。
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