第十一章

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エレベーターに乗って、ライヴハウスのある階へ。 「ええ~。こんなにたくさん?嬉しいなあ!!」 オーナーさんが、手放しで喜ばれた。 「どこに並べますか?」 「ええと~…一階のエレベーター横に置いていいかどうか確認してきますから。あと、ここにいくつか並べて下さい。」 オーナーさんは忙しく階段をかけて行かれた。 「やった~。リハ中だ。」 青木君が防音ドアの向こうから聞こえてくる音を耳にして、はしゃいだ声をあげた 。 「青木君。嬉しいのは分かるけど、さっさと終わらせないとライヴに間に合わなくなるよ?」 「あっ、そうでした。やりますやります。」 「すいませーん。一階に2つほど…お腹大変そうですね。手伝いますよ。」 階段を駆け上がってこられたオーナーさんが、あたしのお腹を見てスタンドを手にされた。 「あ、いえ。大丈夫です。」 「いやいや!!身重な女性に力仕事は!!ちょっと待って下さいね。男手増やします!!」 「いえ、そんな…」 オーナーさんはあたしの声も聞かず、防音ドアを開けて中へ。 …いいのに。 これがあたしの仕事なのに。 中から数人男の人が出て来た。 青木君が嬉しさを隠しきれない顔をしてるとこを見ると、地元のバンドなのね。 ドクン。 お腹の子が、動いた? ううん… これは…あたしの鼓動。 通路に貼ってあるポスター。 野田さんが写ってる。 …Final Destinaion… 今日のバンドだ…。 どうして?バンド名も、メンバーも違う。 ノドが乾く。 鼓動が…激しく打つ。 なんて正直なの。
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