第十一章

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「え…?全部…ですか?」 「そうなのよ。困ったわね…」 近くにオープンする美容院のアレンジメントが、全部却下された。 イメージに合わない、との事で。 今までそのでお店をされていた方から、後に入る店に紹介してあげると言われて。 開店準備の間にチーフさんと打ち合わせをした時は、とても気に入ってもらっていたのに… 「あたし、話を聞きに行って来ます。」 あたしがそう言うと、店長は険しい顔をして 「沢田さんに無理はさせられないわ。私と山中さんで行って来る。」 そう言って、エプロンを外した。 その時… 「ここかしら。うちの店に汚らわしい花を持って来たのは。」 …その時あたしは、自分のして来た事がどういう事なのかを知った気がした。 野田さんの奥さんが、店の入り口で… 「金輪際、うちの店に関わらないでちょうだい。」 冷たい口調で、そう言った。 「あ…あの、もしかして…『MIYABI』の…」 店長が問いかけると 「オーナーです。若い子にチャンスをと思って店を任せたら…とんだ悪い虫が関わってて驚いたわ。」 「…悪い虫…?」 新しく生まれ変わろうとしても。 過去は着いて来る。 そして、どこまでもあたしを苦しめる。 あたしが苦しめたように。
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