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「ハルキ、傷心旅行に出たらしいわ。」
「…朋香さん、元旦那の事をサバサバと…」
「あら、あなたの棚ボタみたいな幸せは、誰のおかげだと思ってるの?」
「あー、すいません。お姉さま…」
あたし達より17歳年上の朋香さんは、歳の離れた姉のように、時には若くしてあたしを生んだつもりの母のように、まだ生まれたばかりの娘の顔を、毎日見に来るようになった。
最初はただのお節介だと言って、あれこれ世話を焼いてくれていたけど…
時々、錯覚してしまう。
あたしには、生まれた時から、こんな環境が用意されていたんじゃないか、と。
若い母がいて、優しい夫がいて。
楽しい年下の友達や、頼もしい同僚がいて。
幸せな環境が、ずっとあったんじゃないか、って。
あたしを溺愛した父の事も、あたしから夫を奪った弟の事も。
父を刺した母の事も。
繰り返した不倫の事も。
…忘れちゃいけない。
人を傷付けた。
不幸にした。
本当は、幸せになる資格なんてない。
だから、怖かった。
幸せになるかもしれない事が。
そんな時、園が言った。
「世界中が許さなくても、俺が許す。あー、何様かって?……そんな顔して見んなよ。」
あたしを抱きしめて…そう言った。
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