第十一章

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「朝子…愛してる…」 あたしの肌をついばみながら、園は何度も繰り返す。 「…園…」 「…ん…?」 「あなたを…あたしのものにしていいの?」 「…それを望んでここに来た。」 「……」 園の頭を引き寄せて唇を重ねる。 記憶の奥底から湧き出るような熱は、誰との物だったのだろう。 今あたしを抱きしめてるのは園なのに…目を閉じるとそれも分からなくなる。 …野田さんの中に園を見ていた事もあった。 だけど今は… 園の中に野田さんを見てしまうあたしもいる。 だけど大きく違うのは。 この男は…誰かのものじゃなく… あたしのものだ。 そして…自由じゃない。 なぜなら… 「…園…あ…っ…」 「朝子…愛してる…」 「……愛…して…る…」 あたしを貫く園の耳元に、熱にうなされるような声で囁くと。 園はあたしを抱きしめる腕を強めて…果てた。 「……いつか…が思ったより早く来たな。」 「…不満?」 「まさか。息が止まりそうなほど…嬉しい。」 「大げさね。」 「本当だぜ?」 「…あたしだけ?」 「朝子だけ。」 「愛してる?」 「愛してる。」 「…良かった…」 園の胸に顔を埋める。 愛してる。 それは… 人を縛る言葉。 あたし達はお互い、この言葉で縛られる。 それが…とてつもなく幸せに感じた。 これでもう、あたし達は自由じゃない。 園。 あたしはあなたを… 一生、離さない。
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